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借金のカタに妻を差し出しました
第5章 瑞樹の決意
矢那と瑞樹が、高校3年生に進級する時、クラス替えが行われ無かった。

始業式の後、クラスの男子達は内緒でミスコン投票を企ていたが、女子に見つかって、クラス全員で男女1名ずつを選び投票する事となった。

その時、男子全員の組織票により、ミスターB組に選ばれたのが瑞樹だった。

瑞樹の性格が、あっさりして、悩むより行動でテキパキとクラスの決め事も解決し、同級生からの相談も多く頼りにされ、男前と呼ばれていた。

しかし、その性格が異性を遠ざける結果ともなっていた。

選ばれた後、瑞樹はクラスでは「ミスター」と呼ばれるようになった。

2人が昔話に花を咲かせ、瑞樹は矢那に投票の時の事を尋ねた。

「あのさ、あの投票の時に私にミスの方で1票だけ入ったんだよね。」

矢那は目線を上にずらして、「そうだっけ。」と、答えた。

「そう、1票だけ入ったの。で、他にも1票だけ入った子がいたの。その子達は夏休みまでには、デートに誘われたり、告白されたりしたの。」

矢那は黙って聞いていた。

「でも、私だけ無かったの、矢那君どう思う?」

矢那は言葉を選びながら

「多分、自信が無かったんじゃないかな。山鹿さんに、ふさわしく無いと思ってたんじゃないかな。」

「矢那君は、そう思ってたんだ。」瑞樹は上目遣いに覗き込むような顔をした。

「えっ・・・知ってたの?」矢那は精一杯動揺を隠した。

「男子の団結力もいいけど、女子の情報ネットワーク舐めないでね。」

「ごめんなさい。」矢那は素直に頭を下げ、言葉を続けた。

「でも、あの時の誘っても迷惑だったでしょ。女子人気も、お金も無かったし。」

「そうでもないよ、矢那君は成績良かったから、嬉しかったよ。」

「えっ。」意外な言葉に驚きながら続けた。「何も、しなかったから、僕はお金を稼いで、君を救う事も出来るようになったと思う。」

「そうかもね。矢那君も苦労したんでしょ。」

矢那は無言で、否定も肯定もしなかった。
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