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歳下の悪魔
第3章  新たな顔


 益々不思議だ。マンションや車の維持費もかかる。それなのに、平然と高い肉を選ぶなんて。
 何も知らないせいだろうか。
 味噌汁の具は、豆腐とわかめ。それも和真の希望。
 レジでは、彼が支払いをしてくれる。今日のお礼だから私が出すと言ったのに、和真がカードで払ってしまう。買った物を袋に詰め、和真の部屋へと向かった。


「美味かったあ。優華、料理上手いね。今度は何作ってもらおうかなあ」
 美味しいと言われて、悪い気はしない。和真は、私が残した分も食べてしまった。
 でも、今日の彼はおかしい。会社でとも、部屋とでも違った。いくつの顔を、持っているんだろう。それらを使い分け、普通に生活をしている。
 人格に、何か問題があるんだろうか。
 私がここまで見たのは、3つの顔。
「あのバンドの、ブルーレイ観ようよ。こっち」
 私は和真に付いて、廊下の次の奥のドアを入った。奥にもドアがあるから、少なくとも2LDKはあるだろう。
 その部屋はソファーと大型テレビがあり、ベッドは置いていない。
「送らなきゃいけないから、今日は呑めないなあ。じゃあ、これで」
 彼は部屋の隅の冷蔵庫から、オレンジジュースとグラスを出してきた。
「カンパイ」
「乾杯……」
 送ると言ったんだから、本当にアルコールは入っていないんだろう。
 美味しいジュースだし、勿論ブルーレイも楽しんだ。
「今日は、疲れさせちゃったね。そろそろ送るよ」
 今の和真と別れるのが、何故か淋しい気がした。でも、私から泊まるとは言えない。この後、別の顔に変わる可能性がある。
 地下の駐車場から車に乗り、少し走った所で欠伸をしてしまった。
「ごめんなさい……」
「いいよ。今日は、ホントに疲れたもんね」
 和真が笑っている。その笑顔は、優しそうなもの。
 騙されてはいけない。そう、自分に言い聞かせた。
 彼は、いくつもの顔を使い分けている。またすぐに、悪魔の顔を見せるだろう。
 シートに寄り掛かりながら、私は外の景色を見ていた。


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