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幸せの頂点
第3章 失敗



何も無い駅…。

改札口に1人だけ駅員が居る。

そんな駅で電車を降りたのは私と部長だけ…。

駅を出れば見事なくらいの田園風景が広がってる。


「こっからバスだ。」


駅から数メートル先にある寂しいバス停へと部長が向かう。

バスは2時間に1本…。

15分ほどぼんやりとしてれば古びたバスがバス停の前で停車する。

そんなバスに乗り込む乗客はやはり私と部長だけという状況で部長と逸れるのが怖くなる。

バスの中ではまた2人席に部長と並んで座る。

バスは私と部長を乗せ、とんでもない山道を慣れたように走り抜ける。

1時間以上もバスで移動する。

山を越えた。

森林の風景の向こうに見える田園を見るたびに部長の目的地がわかる気がする。

あのトマトの生産者のところへ私を連れて行こうとしてる。

何故?

そこまで突き止めてるのなら部長が直接交渉すればいいだけだ。

新人でまだ何も出来ない私を連れて来る理由が理解出来ないままバスを降りた。

そこから更に歩く。

ヒールを履いて来た事を後悔したくなるような道のりにため息を吐く。

30分以上を歩けばビニールハウスが見えて来る。

山間にある少し開けた場所にポツンと孤立した農家が1つだけ存在する。

外部を拒絶するような佇まい。

ここが奇跡のトマトを生産する人の居る場所。

部長は迷わずに4つ以上もあるビニールハウスの真ん中のハウスに入って行く。

部長から逸れる事だけが怖い私は部長の背中を追いかける。


「よう、来たぞ。」


部長が小さな老人に親しげに声を掛けた。


「別に…、呼んどらん。」


老人は険しい表情をして部長を見ずに答える。

老人が見てるのはハウスの中でびっしりと栽培されるトマトの苗だけだ。


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