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黄昏異変 肉欲の奈落
第1章 女医 早苗
 その日以来、たまに三人連れ立っての散歩が半月ほど続いたが、突然、幸子も早苗も愛犬のロロもぷっつり姿を消した。
 事前に何の音沙汰もなく、いきなり姿を現さないことなどはじめてだった。
 どうしたのかと心配しながら三日目を迎えた日、いつもの場所に娘の早苗がロロを連れて立っていた。

 「お久しぶり。お母さんはどうしたの」
 「それが、母は他界しました」
 「エッー、他界って、お母さん元気だったでしょう」

 浩二は仰天した。

 「わたしもまさかと思いました。胸の急性大動脈瘤破裂であっけなく」
 「大動脈瘤破裂か」

 浩二は早苗の言葉を鸚鵡返しにするのがやっとだった。

 「ご愁傷様です。おいくつだったの」
 「六〇です」
 「六〇・・。若いなあ」

 早苗の話では、すでに身内だけで葬儀は済ませたと言う。
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