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黄昏異変 肉欲の奈落
第1章 女医 早苗
 「両親の遺品を整理しながら、一人この部屋の中で異常な興奮に襲われたんです。鏡の中に写る自分を見つめていると、自分の姿が天井から吊るされた母の姿とダブって・・・」

 早苗の目から一筋の涙が流れ落ちた。

 「抑えきれない欲情の渦に飲み込まれ、体中が熱く疼き濡れてゆく自分に慄(おのの)いていました」

 浩二は驚愕の眼差しで早苗を見つめていた。

 「それで、あの浴室で、僕に手錠を」
 「わたしはマゾ。紛れもなく母のDNAを引き継いだ真性のMなんです」
 「僕に手錠で拘束され、吊るされ、強引に挿れられ、それで、君、どう感じたの」

 二人を沈黙が支配する。
 浩二は早苗を、早苗は浩二を、二人は見つめあったまましばらく言葉も出ない。

 「浩二さん、わたしをもう一度吊るしてくださる」
 「もう一度・・・」
 「そうしたらきっと、吊るされながら快楽の世界に堕ちてゆくわたしの性癖がもっともっと丸見えになりますわ」

 早苗は涙に潤んだ目で浩二を見つめながら、己のさらに激しく過激な性癖について告白したのだ。

 「待ってよ早苗さん。おじさんなんだか奈落の底に迷い込んだような心境だよ」 

 (DNAか・・・)

 「僕にはよく分からないんだ。本当に鞭で打たれたり、浣腸されたりして、それが快感になるというのが・・・」
 「あれは・・・、小説の世界は誇張されています」
 「じゃあ、違うのかい」
 「拷問とSMは違います」

 早苗はテーブルに視線を落とした。
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