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完熟の森
第8章 大人
「今日も本借りていいですか?」


「いいわよ。好きなの持って行って」


快諾してくれたので僕は本棚に向かい、また二冊チョイスした。


「ところで、雫さんは何の仕事してるんですか?」


「物書きよ」


「へえ。雫さんの本読みたいな」


「千晶君が読む内容じゃないわ」


そうピシャリと断られた。


そう言われると余計読みたくなった。


雫に近寄り、少し顔を近づけた。


「読みたいなあ」


僕は雫の目を覗き込んだ。


雫の手が僕の頬に触れ、「ダメよ」と厳しく言った。


雫の手は冷たかった。


でも僕の頬は熱くなった。



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