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るりいろ(MILK &honey後日談)
第4章 るりいろ

 蓋を取ると、湯気が上がった。
 潮の香りを柔らかく押し退けて、いい香りが、辺りを包む。
 深呼吸してたら、るりが水筒の蓋のコップに、中味をこぽこぽ注いでくれた。

「はい、どうぞ」

「ありがと」

 受け取って、ふーふーして、口をつける。
 喉を熱さが滑り落ちてって、あったかさが体中にじんわりと広がった。

「あー……すっげーうめー……いつ淹れてたの、コーヒーなんて」

 あったけーからってだけじゃなく、るりのコーヒーは、ほんとに旨い。なんでか分かんねーけど、教わったって同じ味にゃあならねんだよなー。

「いつ?……光が、ふにゃふにゃ寝ぼけてた間。」

 コップを返すとこくんと飲んで、美味し、と笑った。

「そっか……寝こけてて、ごめん。ありがとな」

「ううん。私は、乗ってるだけなんだもん。そのくらいしなきゃ」

 お礼に、るりにちゅってキスする。
 コーヒーの味と香りと、海の匂い。
 すげー幸せ。まるで、

「……なんか、不思議だね?」

「ん?」

 グローブ外した両手で空になったカップを持って、俺に寄りかかってるるりが、ほんわり笑う。

「まるで、世界に光とバイクと私だけしか居ないみたいな気持ちになる」

「……」

 だねー。今、俺もそう思ってた。

 ……って、軽く言えたら、カッコイんだろうけど。
 情けねー事にるりの言葉で涙目になった俺には、返事が出来ねー。
 代わりに、手からカップを取り上げて、地面に置いて、むぎゅっとるりを抱き締めた。

「大分明るくなって来たね」

 るりが俺の腕に頬擦りして、笑う。

「ん。……もうすぐだなー……あ。」

 やっと声を出せたら、明るさの本体が上って来た。

「すごい、きれい……」

 今日生まれたてのお日さまが水面をきらきら輝かせて、少しずつ姿を現してくる。
 ……お日さまは直視したらダメなんだけど、今それ言ったら殴られそうw

「……あのさー?」

「なぁに?」

 この姿勢って良いやねーと、改めて思う。顔見えねーから、言いてー事が、言いやすい。
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