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復讐の味は甘い果実に似て
第7章 割れない数字 ~恵梨の告白~
 まるで、缶コーヒーの苦みが喉を焼くようだった。
 あの日から何度も繰り返した無意味な問いが、わたしのなかでまた、繰り返された。
 
 ……何で、こんなバカなことをしてしまったんだろう。
 
 本間みたいなバカの言いなりになって、後ろ暗いセックスに溺れてしまった。
「俊ちゃんを、大事な人を裏切っている」という背徳的な状況がわたしを昂らせ、ずるずると関係を続けてしまった。
 
 とうにどうしようもない状況に堕ちているのに、わたしだけが、それを認めようとせず、適当な嘘をついて、明日香やひかるを復讐の道具にしてしまった。
 にも関わらず、わたしは明日香と俊ちゃんがセックスを始める寸前まで、復讐なんて脅しで言っているだけで、きちんと謝れば、許してもらえると楽観していたのだ。
 教室で、ひかるに問い詰められた時でさえ、まだ、わたしは、自分で収められると思っていた。

 何度か、俊ちゃんの部屋の前で待ち伏せて話をしようともしたけれど、俊ちゃんは、そのたびに、すがるわたしを振り払うと、何も言わずに部屋に入っていくだけだった。
 部屋に行くたびに、その繰り返しだった。
 だが、それでもわたしは、最後には許してもらえると思っていたのだ。
 目の前で、明日香と俊ちゃんのセックスを見せられるまでは。


 明日香にせよ、ひかるにせよ、あれは、復讐の道具にされて嫌々セックスをする、という態度ではなかった。二人とも避妊もせず、俊ちゃんとのセックスを受け入れ、淫らな悦びに浸る姿を、ひたすらわたしに見せつけていた。
 あれは間違いなく、だましたわたしへの復讐だったのだ。
 ひかるはそのことを隠すこともなく、わたしに絶望しろ、と言った。
 そして、その言葉どおり、俊ちゃんの腕のなかで、女にされて、淫らに悦びを見せつけるひかるに、わたしは絶望した。

 もう、今のわたしがやるべきことは、明日香とひかるの前から消えて、俊ちゃんを忘れることだけだった。
 それしかなかった。

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