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復讐の味は甘い果実に似て
第7章 割れない数字 ~恵梨の告白~
 1年生の時に、土岐先輩と別れたあと、わたしは男漁りのような状態になった。
 テニスサークルとかけもちで入っていた合コンサークルに顔を出して、声をかけてくる男にお持ち帰りされては、ラブホテルに連れ込まれて、抱かれていたのだ。
 
 別に彼氏を見つけようとか、そういう動機ではない。
 そのころのわたしは、男の子というものに何らかの見切りをつけていたのだと思う。
 つまるところ、男の子というのは、情欲をたぎらせたペニスをわたしの膣内に突き入れ、射精して気持ちよくなることしか考えていないのだ、と。
 少なくとも、わたしには、そういう男の子しか近づいてこないのだ、と。
 
 だが、それでも、わたしはそういう男に抱かれ続けていた。
 それを馬鹿馬鹿しいとか空しいとか思いながらも、そのころのわたしには、自分は男の子にモテる、という自意識くらいしか、自分のプライドを保つ方法がなかったのだ。
 
 なんのことはない。
 わたし自身も、自分が内心で馬鹿にしている「見栄えはいいけれど、大して美味しくないお菓子のような男たち」と同程度の女だったというだけだ。
 中身のない男女が、同じレベルで落ち着いていただけの話だったのだ。

 俊ちゃんに出会ったのは、わたしがそういう不毛なことを繰り返しているときだった。
 俊ちゃんはわたしのバイト先のカフェにいつも決まった時間に現れて、決まったものをオーダーし、難しそうな専門書を読みながら、22時の閉店まで粘って帰る。

 俊ちゃんは、いつも身ぎれいにはしていたけれど、服装や髪形は垢抜けていなくて、わたしがいつも遊んでいる男の子たちとは、まるで対極にいる人だった。
 そういう俊ちゃんに、わたしが興味を抱いたのは、自分でもよくわからない理由からだった。
 ありていに言えば、わたしが今の延長線上の生活を続けていくと、絶対に交わることがないだろうな、と思う人と話がしてみたかったのだ。

 そして、わたしはカフェの閉店後に、俊ちゃんを飲みに誘った。

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