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復讐の味は甘い果実に似て
第8章 復讐の行方 ~明日香の告白~
 そして、最後に話すのは、浩二だった。
 わたしは先輩との旅行に行くかどうかの最終判断を、浩二に委ねるつもりだった。
 浩二が嫌なら、わたしはこの旅行には参加しない。
 
 わたしは浩二が帰省先から東京に戻ってくるのを待って、浩二の部屋に行った。
 そして、いつものように浩二に抱かれながら、胸元で新たな復讐の話を打ち明けた。
「あのね、最初に言っとく。わたしは浩二が好き。先輩に抱かれた次の日に、わたしの部屋で浩二が好きだって言ってくれたでしょ。あの時、わたし、浩二のことが改めて好きだって思ったの。」
 わたしの言葉に浩二が照れたような顔を向けた。
 そして、浩二は、わたしがこれから言うことがわかったようだった。

「……また、あの人に抱かれるのか?」
「まだ、復讐を続けないといけない理由があるの。でも、浩二が嫌なら行かないよ。」
 わたしの答えに、浩二は逡巡して、終わりのない問いかけを繰り返しているようだった。
 
 だけど、浩二は求めているのだ。
 あの復讐の夜のように、わたしが先輩に抱かれることを。
 そして、わたしが先輩の腕の中で淫らに絶頂を迎える様を想像し、激しい嫉妬の炎の中で、淫靡な悦びに浸ることを。
 
 また、その一方で、わたしを失うことを恐れる自分もいる。
 そういう二律背反な状況に、浩二を追い込んでしまったのは、外ならぬわたしだ。
 だから、せめて、どうするかの判断は浩二に委ねたかった。

「明日香は、行きたいのか?」
 浩二が、わたしに問いかけてきたのは、わたし自身の意思だった。
「……復讐の道具、って立場にカタを付けたい、とは思ってる。」
 わたしは正直に言った。

 結局、それはわたしのプライドの問題だった。
 せっかく道具になったのに、上手くいきませんでした、では女がすたる。
 そして、浩二はわたしの答えに、絞り出すような声で、分かった、と言った。
 
 わたしは、復讐の流れが落ち着くべきところを目指して動き始めたことを実感しながら、浩二と深く長くキスを交わした。





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