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復讐の味は甘い果実に似て
第9章 さよならという儀式 ~ひかるの告白~
「でも、これで、全部、ケリがついた……ってことだよね?」
 あたしは自分に言い聞かせるように、明日香に問いかけた。
「……ふうん、ひかるはケリがついたってことで、いいんだ?」
 明日香の言葉は妙にそっけない。
「だって、先輩はちゃんとお別れできたし、あたしたちも、恵梨と仲直りできたでしょ?」
「じゃあ、本当に、ひかるはこれで終わっていいの?」
 明日香があたしに向き直った。

 えっ、というあたしの声もかまわず、明日香が言葉を続ける。
「好きなんでしょ? 先輩のこと。」
 明日香はもう、とうに、あたしの微妙な気持ちには気付いている。
 だけど、結局、あたしは最後まで自分の心が整理できなかった。
 先輩のことが、好きかどうかさえ、あいまいなままで。
「……そんなの、自分でもよくわかんないよ。」

 あたしの答えに、明日香は大きくため息をついた。
「あのさ、ひかる、ひとつ言っといてあげる。現実ってやつは、あんたの心が固まるまで、待ってなんかくれないんだよ。あんたの心なんか関係なく、時間も人の気持ちも、容赦なく流れていくの。もう、いい加減、自覚しなよ。あんたは先輩に、気持ちより前に体からモノにされちゃったんだから。仕方ないじゃん。そういう風にしたのは先輩でしょ?」
「……それは……そうかもしれないけれど。」

「なら、ひかるの抱えるよくわからない気持ちも含めて、先輩にぶつけてくるしかないよ。わたしはそう思う。……ま、どうするかは、ひかる次第だけどね。」
 そういうと、明日香はバス停にあたしを残して、浩二君のアパートへと歩いて行った。





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