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復讐の味は甘い果実に似て
第1章 終わりと始まり
 僕が大学院で情報工学を学んでいるのも、大元の根っこのところは、この14歳の時の嫌な記憶に起因しているのかもしれない。
 端的に言えば、女の子に対してものすごく憶病になってしまったのだ。
 14歳の中学生の当時はよくわからなかったけれども、今にして思えば、僕は母の不倫という認めたくない現実を自分の中で受け止めて消化していくために、一種の自己防衛手段として、女性不信になっていたのだと思う。

 僕の家は田舎の旧家だったが、父は入り婿だったので、離婚して母が出ていった後も新田という性を名乗り続けていた。だが、僕はその新田という自分の性を女の子に呼ばれることさえも不快だった。

 必然的に、僕は女の子から遠ざかる様になり、得意科目や志望コースも、女の子の比率が少ない理数系になっていった。 
 別に女の子に興味がない、というわけではない。
 女性に対する嫌悪感から意識下で淫靡な妄想を抑え込んでいる分、そういうことに対する欲求は人一倍あっただろう。だが、結局、僕は高校、大学と女の子とは無縁で来てしまっていた。
 時折、女の子の側からモーションをかけてくれるような状況も何度かあったと思う。
 だけども当の僕は、それさえも尻込みしてしまっていたのだ。

 そういう僕にとって、恵梨との出会いは神が与えてくれた最初で最後のチャンスかもしれなかった。
 泥酔した挙句、ろくに記憶がないまま、僕のアパートに連れ込まれた恵梨には申し訳ないと思うが、あの夜、酒が、僕のあらゆるタガを外してくれなければ、僕は彼女に触れることさえできなかっただろう。

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