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復讐の味は甘い果実に似て
第3章 復讐への階段 ~明日香の告白~
「……第一、復讐の道具っておかしくないですか? そんなこと、まともな人間のすることですか?」
 怒鳴りつけても意味がないことを悟ったのか、浩二は口調を改めて、トーンを落とした。

「別に、僕は自分のことをまともだとも、モラリストだとも思っていない。非常識なことは承知しているつもりです。」
「なら、デリバリーの風俗嬢でも呼べばいいでしょう? そんなことに、明日香を巻き込むべきじゃない。」

「そういうプロの女性だと、復讐の効果が薄いんですよ。だから、平河さんたちに道具になってもらうんです。」
「明日香を道具呼ばわりするな!」
 声を押さえていた浩二が、テーブルを叩いて怒鳴った。

「いいえ、この件では、平河さんは道具です。そうなることを彼女自身が了解しているはずです。」
 確かに、先輩の言うように、わたしは賭けの前提として、それを了解してしまっていた。

「そもそも、負けたら復讐の道具になれ、なんて約束自体がおかしいじゃないか!」
「僕は事前に平河さんに全てを話しています。そのうえで平河さんは僕と約束した。僕は、最初に言ったことを実行しているだけです。約束自体がおかしいというなら、最初から約束なんてするべきじゃない。」

「もういい! あんたと話しているとこっちの頭がおかしくなりそうだ。とにかく、明日香はこんな話に協力させない。復讐したければ、あんた一人で勝手にやれ。」
「この件について、あなたは部外者です。僕は平河さんと約束しているんです。もっとも、平河さん本人が約束を違えて、この計画から降りるというなら話は別ですが。」
「はあ? 降りるに決まってるだろ。こんな話。」
「あなたには聞いていません。平河さんに聞いているんです。どうなんですか?」
 
 しばしの沈黙のあと、わたしは絞り出すような声で、すいません、と先輩に頭を下げた。

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