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復讐の味は甘い果実に似て
第1章 終わりと始まり
 そして、それからの1年は僕にとって、恵梨と結婚するための準備期間になった。
 とにかく、いいところに就職を決めて、恵梨と婚約する。
 そして、彼女の卒業を待って結婚する。
 僕はそのために、ありとあらゆる努力をするつもりだった。

 まずは、研究室の同期のなかで抜きん出た存在になり、就職に教授の推薦を得るのだ。
 そのためには、さらにいくつか学会に入って、積極的に論文を投稿しなければならない。
 僕はひたすら本と論文を読み漁り、レポートを書き、時には教授の鞄持ちとして、いたるところに出かけることにした。当然、恵梨と会う時間は減っていたが、それは仕方のないことだった。

 そのうち、指導教授も僕の努力を認めて、博士課程に進学しないか、と勧めてくれた。
 だが、僕が就職したい旨を伝えると、かつて自分が勤めていた自動車メーカーの研究所に僕を推薦してくれた。
 日本人なら誰でも知っている自動車メーカーの研究所だ。
 うれしくないわけがない。
 しかし、僕の喜びの半分は恵梨の笑顔を見ることだった。

 僕は親よりも先に恵梨に電話をかけ、無事に就職が決まったことを伝えた。
 恵梨はケーキと小さいシャンパンで祝ってくれたが、僕にとってそれは、これから彼女と長い人生を共にしていくための第一歩だった。

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