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⊥の世界
第10章 家族計画


結婚と同時にこのマンションに越してきた。
二年位は二人で旅行したり新婚生活を楽しみたいという家族計画は互いに望んだものだった。
それまでは、私も仕事を続けていて今ほど暇ではなかった。



そして、予定の二年を過ぎて、そろそろ子供が欲しいね、なんて、ここまでは普通の夫婦だったと思う。


ある時、私が職場で転倒して出血。救急車で搬送。夫も職場から病院に駆け付けてくれた。


『残念ですが、お腹の赤ちゃんの命は、、』

妊娠していることにも気付かないうちに、私は流産した。夫もかなりショックを受けていた。

「ごめんなさい、あなた、赤ちゃん、ごめんなさい。」

夫は、私の体が無事だったことが一番大事だよと慰めてくれた。
それからは、基礎体温を計ったり検査薬を使い、手帳で管理して妊活した。
1年後、ようやく妊娠した時に、私は仕事をやめた。
脚立の昇り降りが頻繁な仕事だったから。


そこまでして大事をとったのに、安定期に入るまでに腹痛になり入院、切迫流産の恐れがあると2ヶ月の入院をした。
夫は毎晩病院に寄ってから家に帰り、週末もずっと病室で過ごした。

でも、それは報われずに結局流産してしまった。それからまた妊活しても、妊娠することはなかった。

「ねぇ、あなた、治療を受けてみようと思うのだけど。」

入院した病院で不妊治療を行っているのを知っていた。
原因があるのか、気をつけることがあるのかもしれない。

「いや、子供は授かりものだと思っているよ。だから自然に任せたいと思うんだ。」

普段から優しさだけで出来ているような夫が、それだけは譲らず、何度頼んでも同じ言葉で断られた。

1人で受診することも考え、話したけれど断られた。夫に内緒で受診するまでの勇気もなく、本やネットの情報を頼りに、自分なりに妊娠に向けての食生活や生活環境にも心がけた。

しばらくは、『今月も生理がきた。』と妊娠していないことを夫に話していたが、それも夫へのプレッシャーになるという話を目にして報告もしなくなっていった。

妊娠はしたのだから、夫に問題はないのは明らかで、遺伝子的な問題か、母体としての問題のはずだ。


夫は、流産した原因を医師から聞かされているのかもしれない。
その話題から避けていくうちにそう思うようになっていった。


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