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女教師と男子生徒、許されざる愛の果てに~シークレットガーデン
第4章 哀しいすれ違い
「お母さんが日本に来られたのは十代のとき?」
「そう、十五だった。八人兄姉弟妹(きょうだい)の下から二番目だったのよ、あたし。貧乏で本当にどうしようもないくらいに貧乏で、あたしはそんな貧乏暮らしが嫌で、祖国を棄てたの。悔いはないよ。今じゃ、両親やきょうだいの顔さえろくに憶えちゃいないわ。だって、十五で故郷(くに)を出て、今じゃフィリピンで過ごしたよりも日本で過ごした方が長くなったんだものね」
「失礼ですが、長瀬君はお母さんはいまだに日本語が上手く喋れないから、家庭訪問には来て欲しくないと言われているんですが」
「ふふっ、あの子がそんな嘘をついてるの。大翔はあたしをあんまり知り合いに逢わせたがらないんだよ。あたしって、誰にでもこの調子で喋るから、あの子が嫌がるの」
 確かにユニークな母親だが、恥ずかしいというほどではない。きっと、彼が母親を紹介しないのは世間の冷たい視線に無防備な母親を晒したくない、守りたいからだとこの時、心優は確信した。
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