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爪先からムスク、指先からフィトンチッド
第19章 5 王と姫と王子
「もし……もしもだよ? 君が僕を愛すると言うなら――別だが」
「愛する……」
「ああ、男として、そうだな。ジャンよりも、俺を選べるなら」
「ジャンよりも……」
「王より王子を選ぶなら、俺は君の皇帝になってみせるよ」
涼介は知らず知らずに環のことで頭がいっぱいになり、口説いている。
「そろそろ、帰るよ。従業員に変に思われてもいけないから」
「うん。ありがとう」
「今度、うちに招待するよ。おやすみ。プリンセス」
柔らかくなった表情の環を一目見て、涼介は部屋を立ち去った。
何事もなかったように冷静さとミントの清涼な香りを身に纏い、ホテルの従業員たちに笑顔を振りまきながら涼介はホテルの外へ出た。
薫樹の前では毅然と女王様然とした環はTAMAKIの姿なのだろう。薫樹と出会った時にはもうスーパーモデルとして活躍していた頃であったため環の素顔は薫樹ですら知りえなかったようだ。恐らく、ジャンとマリーが環の事を想い、立ち振る舞いやコミュニケーションの取り方なども教え込んだのだろう。
実際の彼女は鎧をつけた王女のようだ。本心を率直に告げることはない。思わせぶりと曖昧さによって虚像を演じている。本来の彼女が見えるのは外見では足先だけだ。
涼介は自分にも薫樹のように得るべき相手、失わざる相手が見つかったのだと実感する。
「今度会ったら絶対に抱こう」
心をきめて環を想った。
「愛する……」
「ああ、男として、そうだな。ジャンよりも、俺を選べるなら」
「ジャンよりも……」
「王より王子を選ぶなら、俺は君の皇帝になってみせるよ」
涼介は知らず知らずに環のことで頭がいっぱいになり、口説いている。
「そろそろ、帰るよ。従業員に変に思われてもいけないから」
「うん。ありがとう」
「今度、うちに招待するよ。おやすみ。プリンセス」
柔らかくなった表情の環を一目見て、涼介は部屋を立ち去った。
何事もなかったように冷静さとミントの清涼な香りを身に纏い、ホテルの従業員たちに笑顔を振りまきながら涼介はホテルの外へ出た。
薫樹の前では毅然と女王様然とした環はTAMAKIの姿なのだろう。薫樹と出会った時にはもうスーパーモデルとして活躍していた頃であったため環の素顔は薫樹ですら知りえなかったようだ。恐らく、ジャンとマリーが環の事を想い、立ち振る舞いやコミュニケーションの取り方なども教え込んだのだろう。
実際の彼女は鎧をつけた王女のようだ。本心を率直に告げることはない。思わせぶりと曖昧さによって虚像を演じている。本来の彼女が見えるのは外見では足先だけだ。
涼介は自分にも薫樹のように得るべき相手、失わざる相手が見つかったのだと実感する。
「今度会ったら絶対に抱こう」
心をきめて環を想った。