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会社のドSな後輩王子に懐かれてます。
第10章 甘い微熱と寂しさと


────山下サイド────



今日はなんだか調子がおかしい。

やけに身体がだるいし、咳もでるし。
食欲もなくて、朝は何も食べてきていない。

それでも一日くらい乗り切れるかなと思って、
マスクを着けて仕事にやってきたんだけど……


「ユイさん、ここお願いできますか?」
「……ん、はい。了解です……。」


だめだ、頭がぜんっぜん回らない……。


とりあえず手渡された書類を受け取る。

えーと。
あ、これ白馬くんに回さなきゃいけないやつだ。

ここをチェックして手直しして、
データをパソコンに打ち込んで。

うん、手慣れた作業ならそれなりに出来そう。

手際よくキーボードを打ち、単純な作業を済ませる。
よし、あとは白馬くんに渡すだけだ。

席から立ち上がり、彼に書類を渡そうとした
そのとき。



「白馬くん、これおねが……っ」



彼の目の前でぐらりと歪む視界。
ふらつく足元。



────あれ、なんか、やばい。



自分の体重を支えきれず
そのまま倒れそうになったところを
白馬くんが咄嗟に受け止めてくれた。


「っと…先輩、大丈夫ですか?」
「……すみません、少し躓いてしまって。」


彼に抱きかかえられているようなこの状況。

早く起き上がらないと色々まずい。
すでに四方から視線感じるもん。

そう思って、彼から離れようと手に力を入れたんだけど。



「……あの、白馬くん?」



なぜか離してくれない。
それどころか私の背中に手を回して
背中を優しくさすってきた。

戸惑う私の耳元に、彼がそっと口元を寄せる。



「ユイ。俺が仕事終わるまで、おうちでいい子に待てる……?」



私だけに聞こえるくらいの、小さな声量。

……やっぱり体調悪いのバレてた。

観念して小さく頷くと、
彼が私を起き上がらせて、腕を離してくれた。


「申し訳ありません課長。山下さんが具合悪いそうなので早退させてあげてください。」


白馬くんが私に代わって申告する。
その言葉に課長は快く了承してくれた。

いい会社でよかった……。

私は課長と白馬くんにお礼を言い、
力の入らない身体で帰る支度を整える。

にしても、白馬くんあんなことして大丈夫なのかな。
絶対関係疑われるよアレ。


頭の回らない頭でそんなことを思いながら、
私は一人その場をあとにした。

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