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会社のドSな後輩王子に懐かれてます。
第12章 兎と蛇


私はうさの腕を掴んで、強い眼差しで彼を見つめた。


「うさ、謝る前に蛇塚さんとしっかり話し合って。このままだときっと後悔する。」

「……後悔?どういうことだよ?」


……私から言えることじゃない。

これは当事者同士で解決しなきゃいけない問題だ。


「いいからとにかく話し合うの。わかった?」


うさの腕を掴む手に力を入れて、強い語気で告げる。
すると、彼は僅かに動揺しながらも、
「お、おう」と言って顔を頷かせた。


大丈夫、絶対に二人は昔通りの仲に戻れる。
こんなにお互いを想い合ってるんだもん。
戻れないはずがない。

わたしは確かな確信を抱きながら、
うさとそれぞれの部屋に戻っていった。




















────それから。


私と蛇塚さんは豪華な夕食を食べ終え、
わたしは一人お風呂に入る準備をしていた。

蛇塚さんは、私とうさが話している間に
先にお風呂を済ませたみたい。

部屋に立派な露天風呂がついていて、
彼女いわく、景色も最高だったそうな。
もう暗くてほとんど見えないだろうけど。


「じゃあ私行ってくるね。」
「ええ、ごゆっくりなさって。わたくしは飲み物を買って参りますわ。」


そう言いながら、蛇塚さんも一緒に立ち上がる。

彼女が静かに部屋を出たのを見送ってから、
わたしも脱衣所に向かおうとした、

そのとき。





『……て……が…………るの?!』





部屋の外から蛇塚さんの声が聞こえた。

明らかに動揺している声音。
恐らく相手はうさだ。

内容が気にならないといったら嘘になるけど、
聞き耳を立てるのは良くない。

そう思って、
私は気にせず脱衣所の扉に手をかけたんだけど。







『だって!あのとき教室でわたくしのことが嫌いと仰ってたじゃない!』






────扉を開ける前に、
思いも寄らない言葉が私の耳に飛び込んできた。


涙ぐんだ、悲痛の叫び。


たぶん、二人のすれ違いの発端になった出来事だ。
私は思わず耳を澄ます。



『やっぱお前、あれを聞いてて……!』

『……っ。そう、聞き間違いじゃなかったのね。……本当にごめんなさい、迷惑かけてごめんなさい……っ!』




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