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哀色夜伽草紙
第5章 狂った時計
その後、二人で洋食屋に入った。

私も壱くんも家族で小さい頃から通っている店で、今日は久々に食べたくなって来たのだった。

「あら壱くん、琴莉ちゃんいらっしゃい」

「ご無沙汰しています。久々にここのハンバーグ食べたいって壱くんが。なので来ちゃいました」

「あらあらうれしいわ、じゃあチーズハンバーグかしら?壱くんは!琴莉ちゃんはどっち?目玉焼き?大根おろし?」

お店のおばさんは嬉しそうに私に昔から決まったメニューを聞いた

「目玉焼きかな」

「はあーい待っててね」

すぐに厨房に戻ったおばさんの後ろ姿を何となく眺めていると、壱くんがテーブルの下で手を繋いできて、小さな声で話始めた

「ねぇ琴莉。どうしてオレを彼氏って言わないの?」

「だって……」

いつかは離さなくちゃいけない手を今だけだからなんて割り切れない。

それならただ身体を貪る関係でいた方が楽だ。従兄弟だと言う事を言うのは良いけれど彼女だなんて言ったら……

離せなくなる。貴方とは結ばれないとわかっているのに。

「琴莉が何を心配するのか何となくわかる。でも、オレは琴莉を離す気なんてないし、何も変わらないよ、変わらせるもんか」

壱くんは唇を歪める。

「琴莉はオレの全てだから……」

「壱くん……」

私はどうしていいか分からずにそのまま壱くんの手を握り返して視線を迷わせていると

「はい、お待ちどうさま」

ハンバーグが出てきたのでおばさんにお礼を言った。

「うわっ美味しそう、やっぱりいいね、食べよう」

壱くんはそう言いながら私を見て頷く。ゆっくりと離された手、甘い視線。

どうしたって好きという気持ちしかない。

(壱くん、好き……)

二人で見つめ合っていたその時だった。

「あら珍しい、長谷川さん!」

入ってきたのは壱くんのご両親、つまり私の伯母と伯父だった

「こんにちは!お、琴莉ちゃん、壱、来てたのか」

「伯父さん伯母さんお久しぶりです」

私は笑って挨拶したが伯母さんはニコリともしなかった。

「珍しいじゃない二人で外食だなんて」

壱くんは表情を変えずに黙々とハンバーグを食べながら呟いた。

「たまたまな、母さんが食べたいって言うから出てきたんだ。……しかし相変わらず仲が良いなお前たちは」

伯父さんの快活な笑い声に伯母さんが顔をひきつらせた

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