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第4章 ブリックワープ事件

　4年前の2月、パキスタンのある研究所がタイムマシンを50年前にセットして起動する、とのニュースがとあるSNSに投稿された。

　東川真はあるサイトでそのニュースを知った。
　当時60歳を迎えたばかりの東川真は、給料がガタンと下がるのに嫌気して、20年勤めた会社を退職、大阪から田舎の福井に引っ越しを計画していたところだった。
　それで本当に50年前に戻れるタイムマシンができたら、どんなに嬉しいことか、と胸躍らせたのだった。

　しかしそのニュースの追加情報は流れなかった。東川も退職手続きなどバタバタしていた時期だったこともあり、パキスタンのことは忘れていた。
　そして5月1日、彼は福井県に引っ越した。

　その週のことである。彼はネットで、日本でもタイムマシンを起動する、という小さな記事を見つけた。

　それも実験基地が福井県内で、住んでいるところからクルマで30分ちょっとのところだ。