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第6章 今井久子のこと

「ということで、私もあの事件に影響を受けた一人なの。影響を受けたというか、人生が変わった」

　女はそこまで言って、それからあらためて、自分には東川真子という女性名がある、と言った。

「あなたもわたしと同じように、飛んで来たレンガにぶつかり、その影響で身体の構造が変わって変異体になったんでしょ」

　久人はひどくうろたえ、近くのソファーに倒れ込むように身を沈めた。

「驚きました、同類にあったのは初めてです。でも噂ではソリューションXという組織はミュータントの集まりだって聞いていたし、ひょっとしたらという思いもありました」

「レンガの直撃を受けた人は皆、変異体となったの。わたしは仲間を探し回った。

　変異体とひと口に言っても、皆、その変わり方はいろいろみたい。さっきも言ったように、わたしは60歳のじいさんだったけど、30歳の男と女の二人になった。で、今は自分の意思で両性具有の一人にもなれる。両性具有っていうのは、今のところわたしだけみたい。

　それとわたしは、ちょうど半分、同じ年齢の二人になったけれど、これはみんなバラバラ。

　あとね、２体に分かれるのでなく、何かになるってパターンもあるわ。若い男が多いんだけど、助平なことを考えていた時に事故にあった人はそうなるみたい」