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さすがに無理やろ
第10章 天国と地獄

こんなにまどろっこしい恋愛は初めてや

そもそも
何をきっかけに
青山さんに惹かれたんやったっけ?

正直
「付き合う」という約束無しに
体の関係から始まるった恋愛もあったし
相手のことなんか
何も分からんまま
付き合うたこともあった

せやのに
小さな声で
「はい」
と、返事をした青山さんを
抱きしめたくて
抱きしめたくて
たまらん俺は
なんなんや

「わかった。
ありがとうな。
無茶苦茶嬉しいわ」

そう言い終わると
我慢しきれんなった俺は
妙に緊張してる青山さんに少し近づいて
優しく…無茶苦茶優しく
ものすごくそっと
青山さんの肩を抱き寄せた

「安心してええで。
俺の気持ちは変わらへん。
せやから
俺とおるとき
無理せんといてな」

「……」

「それと
俺のこと嫌いにならんとってな
これ以上
なんもせぇへんから」

「…」

「ほんまはしたいけど」

「新飼さん…」

「あはは。
しゃあないやん。
俺は青山さんのこと
好きなんやから」

そう言って
青山さんの顔を覗き込むと
青山さんは
まだ持っていたコーヒーカップを
急いでテーブルに置いて
両手で顔を隠した

「…もう」

クスッ
青山さんの口癖やな
どう返したらええか分からん時は
必ずそう言うてる

会社では
絶対に聞かれへん言葉や

会社では
全く迷いがなく
決断早いからな

俺は
会社の奴らが誰も知らん
青山さんを見てる優越感に浸りながら
それからしばらく
久しぶりに触れる
柔らかい女の子の肌に
酔いしれていた

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