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微妙なお年頃
第4章 ・・こない
 ハッと気づいてコズエは動きを止めた。
体の記憶をたどってみる。そしてとんでもない現実に突き当たった。
体中の血液がサーっと音を立ててくだっていくのを感じた。
「ねえちょっと、どうしたの?なんか顔色…え?まさか…アンタ…」
文子までもが額を閉じ、不安の色を濃くした目つきに変わっていく。
「もしかして…きてないの?」
「うん…半年…きてない…彼と関係してから…きてないよ、まさか…」
さっきまでの勢いはどこへやら。
にぎやかな店内の中の、ここはまるで別世界のように淀んだ空気が二人を取り囲んだ。
「そんな…心配しないでさ。そうと決まったわけじゃないんだし、
 ほら、子供産んでるんだから、兆候とかわかるわけじゃん?
 でもそういうのはないんでしょう?私に言われるまで気づかなかったくらいなんだから。
 それにもしかして、ほら」
文子の慰めの口調が急に明るく変化した。
「あがりなのかもしれないし」
「あがり?」
「そう、閉経よ」
霧のように囁かれたその言葉、その通りならありがたいような、寂しいような…
 複雑な心を抱えながら、コズエは水滴でびしょびしょになったビールジョッキを
両手で包み込んだ。


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