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微妙なお年頃
第5章 中年女子、次から次へ
 部屋に入るとまずはバスルームに直行する拓哉だが、
こちらもいつもと違ってベルベッドの光沢がきれいなソファにドスンと腰を下ろし、
ソファをトントンと手のひらでたたく。コズエに座れと合図をしてきたのだ。
「どうしたの?シャワー、いかないの?」
拓哉との間の少し隙間を開けて、隣りに座ってから男の横顔に声をかけた。
「シャワーの前に、ちょっと聞いておこうと思って。
 今日はめずらしいおねだりしたけど、なんかあるの?話、とか。
 もしかして今日で終わりにしよう、とかいうの?だから最後の記念にとかって
 こういうことしたの?」
コズエの口がぽかんと開いた。こんなにあれこれ嗅ぎまわる、というか思いつくというか。
これまでの拓哉は面倒くさい話はまるでしなかったので、驚きに体も気持ちも少し引いた。
「そんなんじゃないわ。あなたと終わりにしたいなんて考えていないわよ、今のところは」
言い終えて、間髪入れずにコズエが聞き返す。
「だけどなんで先に聞いておこうなんて思ったの?終わってからでもいいのに」
彼のほうこそ、どういう意図があってあんなこと聞いてきたのか。
その方がよっぽど聞いてみたいとコズエは拓哉の顔をじっと見つめた。
すると拓哉は淡々とした口調で答えた。
「だってさ、これで終わりだっていうなら記念にふさわしいくらい
 思いっきり頑張っておかないとさ。でないと悔い残りそうだし」
は?なにを考えているのだ?この男は、とコズエの眉頭は歪んだ。
情事の相手に何を求めているのだろう?
今更気づいたが、今どきの若い人って、いったいなに考えているんだろう?

せっかくだから一年経った記念に聞いておくか。「こない」話は後にして…


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