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微妙なお年頃
第5章 中年女子、次から次へ
 コズエは、よっこいしょとわざと声に出しながらソファから立ち上がった。
「さっそくシャワー?」
呑気な声を上げる拓哉に、コズエはニタっと笑いかけながらバッグを持ち上げた。
「用も済んだことだし、私、帰るわ」
これからは究極の心配をすることなく男を受け入れられるのだと
浮気のさらなる継続を楽しもうと考えていたのだが、
この一連のやり取りが、この辺で正気に戻れという合図のように感じた。
いつかは止めないと、なにも起こらないうちに止めておかないと、
手痛い罰が当たるやもしれないし。
なんといっても、そうしようと思った時がその時なんだと、
これまでの人生経験で悟ってきたではないか。

 呆気に取られている拓哉を部屋に残し、
コズエはそのままピンクのライトに包まれている部屋を出た。
もっと何か言おうか、はっきりとこれで終わりにしようと言おうかと
ちらりと頭をよぎったが、そんなに複雑な心模様があったわけでもないのだし、
浮気を専門としていた拓哉なら、これがどういう場面だかよくわかっているはずだ。
それに、カレも今日の日に何かが起こるんじゃないかと心の準備をしていたようだし。
最後になるなら頑張っておこう、ってね。でも悔いは残していないようだ。
それが証拠に、拓哉はコズエを引き止めなかったのだから。




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