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プリティ・ウーマン
第3章 瞳の中の黒真珠
一瞬、どうしても誰かに話を聞いてほしくてバーで知り合った同業の子のラインを開く。
名前の欄には❝あつこっぴ❞という文字。全部平仮名なのが、彼女がメンヘラ気質なのを表しているなぁと改めて思った。
「だけど、所詮風俗嬢だもんね…。」
自分の事を棚にあげてこんなのを言うのがおかしいのは分かってる。だけど、同業の友達ほど信用してはならない人種はいないと思う。
ましてやそれがバーやホストで知り合ったと云うならなおさらだ。
よく風俗の控室やロッカーに女の子同士の連絡先交換禁止・食事会禁止、と書いているけれど、あれも決して意地悪で書いているわけではない。店長クラスの人たちなら知ってるだろうけど…女同士が仲良くなって良い事など何も無いのだ。
──結局の所、昼職でも一緒だけど人の幸せを素直に喜べる人ばかりが周りに居るとは限らない。
ここが大きなポイントになるだろう。
この人だったら、と思ってお金を貸しても逃げられる時は逃げられる。内緒で恋人が居る事を教えると、何かの拍子で喧嘩した時にツイッターや掲示板に晒される。
稼げたよ!と嬉しそうに報告すると、マウントと取られ…。稼げなかった、と報告すると安心されるか慰められる。
結局、こういう関係で上手く行くのは❝稼げない❞とか❝好きな男が振り向いてくれない❞とか可哀相な話題を提供する子のみなのかもしれない。
少なからず、私はそういった同業の子としか知り合いにならなかった。
所詮は、源氏名同士の付き合いでしか無いのだろう。
現実世界に友達や彼氏や家族を持っていない人ならばなおさら、源氏名でしか生きれないのかもしれない。
「……あの人に迷惑かけるし、やめとくか。」
本当は自慢したいし、報告したい。
だけど、あの人の無邪気にスマホゲームをしている姿を思い出すと……誰かに報告するなんて事、出来なかった。