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プリティ・ウーマン
第6章 友達から始めよう
「こちらです。」
と案内されたのは、全てのドアの前を通り過ぎ、お手洗いを越えて、沢山の本が並べられた壁の前だった。
「「壁?」」
私達2人の声が被ったのを聞いて、可愛らしい顔した男の子はどこか満足気な表情をすると……一つの分厚い英本を取り出し、中にあるゴールドのスイッチを押し暗証番号を入力する。
すると───ブゥーンと云う機械音が鳴って、壁が2つに離れ、そのど真ん中に100と云う文字のプレートが飾られたドアが現れた。
「これ…」
これが、【隠し扉】というやつか。
おしゃれなインテリアになっていた、沢山の分厚い本と木製の本棚が、まさか隠し扉に続く物だなんて誰が想像するだろう?てか、これを作った人のアタマの中はどうなっているんだろう?
さあさあ、と急かされる様に私の背中を軽く押したドアマンの彼は扉をノックしてから小さく開けてから、その隙間に私と勇利を入れた。
「……あ、あの」
────真っ白な壁紙には、大きな大きな名優アラン・ドロンのモノクロポートレート。そして天井には、まるで舞踏会かと思わせる位の大きなシャンデリア。
ダイニングテーブルは、お洒落な猫足型のこれまたレトロな物だった。真ん中の可憐な花瓶に3本生けているお花は季節にピッタリの向日葵。
そして──‥‥そんな漫画から出てきた様な部屋で、漫画から出てきた様な高そうなチェアーに腰掛けて、気ダルげに煙草を吸っているのは、私が何度もyoutubeで見ていた、あのスーパースターFBK・リーダーのイルトだった。
「あ………」
「っ……あ」
「あんたさぁ…」
二人して同時にそんな言葉がシンクロする。
勇利はと云うと……私同様、パリの社交界にでも来た気分になってカナリ緊張しているのだろう。動揺を隠せないかの様に前髪辺りをポリポリと掻いていた。