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プリティ・ウーマン
第8章 胸の奥のモヤモヤ



─────8月20日。私達親子が韓国に弾丸旅行に行ってから一ヶ月半ほど経った。……数字だけ見ると夏も終わりに近付いているはずなのに、何故か大阪は殺人的な暑さが続くばかりだ。

駐車場から自宅へと戻るその数分で、もうすでに体力が奪われてしまう。それが例え朝イチでも、夜であっても。



「ママ、イルトは?」

「あ〜、今日はイルトお仕事だからゲーム出来ないよ。」



「え〜〜!!」


「明日なら出来るんじゃない?メッセージ送ってみたら?」

「うん!ケータイ貸して!」


「はい。」


今日の夕飯は勇利の大好きな生姜焼きに、トロロに、おひたしが数品。全部で八品あった。もちろん、ほとんど食べるのは私なんだけど。


「今日もお仕事お休みしたの?」

「うん。今はちょっと休憩タイムなの。」


そう。私が最近ずっと何品もご飯を食卓に出せるのは仕事をしていないから、だ。元気も能力も有り余っている。

勇利も、最初こそ仕事に行かない私にビックリしていたけど『お仕事変えるかどうか迷ってるの』と素直に打ち明けると、なるほど!と言った具合にそれからは何も言わなくなった。

むしろ子供心としてママがずっと一緒に居て、たまに保育園を休んで二人で出掛けれる事が嬉しいだろう。


「あ、イルト、きどくついたよ!!」


「うそ、お返事は?」


「ん〜、まだ!!」


「そうなんだ。もう少し待ってあげたら?」

「そうだね〜、イルトは❝スーパースター❞だもんね〜」



まだ英語を打ち込む事は出来ないから、ボイスメッセージ機能で何かあるたびにイルトイルトと言う勇利。この子がここまで懐くのは珍しいったらありゃしない。

勇利が大人なのか、彼が子供なのか知らないが、何か似てるのだろう。性格か?それとも精神年齢か?


そう考えると、まだかまだかと返事を待っている勇利の隣で食後のコーヒーを飲みながら、笑顔が溢れた。


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