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有翼神は翼無き女性を愛する~異世界の溺愛恋模様
第4章 思案と困惑~ルーキフェルside

 なぜ……俺の力なのに、こんなものが表れるんだ?
 俺が遥か昔に捨てたもの。いや、有無もなく奪われた力だというのに、どうしてエイミスに宿ったのか、はなはだ疑問しか浮かばん。

「リャナンシーに服を持って来させる、もう少しそうしていろ」
「そんなぁ……」
「裸体で神殿を歩くか?」
「……うっ」

 大人しくシーツを被り、リャナンシーを待つ素振りを見せたのを見届け、俺は部屋から先に出た。
 リャナンシーは命じなくとも、勝手に服を持って来るだろう。それよりも、釈然としない俺の心のほう。

(俺が僅かながらでも本気になるとは……全く)

 そんなものは捨てたはず。悪魔の俺に遊び以外の心などない。……ないはずだ。気の遠くなるような時をそうして過ごして来た、それが当たり前の悪魔的感情。

(近頃下界に降りなかったせいで、鬱憤でも溜まったか?)

 面倒だと己が役割だけをこなし、ほとんどを神殿の中で暮らす日々。それに不服などありはしない、悪魔でも神と名づけば役割は存在するもの。……押しつけられた役割だが。

「……。
リャナンシー! 暫く出るぞ!」
「いってらっしゃいませご主人様」

 悪戯好きだが逆らわぬリャナンシーに言葉を投げかけ、俺は久しぶりに下界へと向かうために漆黒の翼を広げた。

 空を飛ぶのは嫌いではない。どこまでも続く雲海から、次元の層を抜け下界へと舞い降りる。
 人間には、俺たちのような神々は見ることすら叶わん。逆にこちらが人間に見えるよう、姿を替えるほうが多い。

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