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溺れるくらいに愛して
第1章 溺れるくらいに愛して
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「落としましたよ」

 本職の事務の仕事が終わって、法律ギリギリ……というかアウト? なブラック寸前? いや、もう黒く染まりきっているであろう風俗店への出勤の合間によく行くカフェ。

 ここのカフェは囲われた一人専用席があり、スマホの充電ができるのが行きつけポイントだ。

 レジが終わり、会計をする時にキーケースを落としてしまったのだ。

「あっ。ありがとうございます」

「いえいえ」

 にっこりそう微笑んでくれた男性は、高級ブランドであろうスーツを着こなしていた。体型も顔つきも手入れがいき届いていて、つい見入ってしまった。

「では」

 去っていく姿もスムーズで、この日は仕事中も彼のことを考えてしまっていた。今思い返すと一目惚れだったのかもしれない。
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