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狼に囚われた姫君の閨房録
第17章 総司の肺結核
「構いません」
総司の悪戯っぽい目を私は見返した。そう言えば私が引き下がると思ったんだろうけど、そうはいくものか。
私は薬湯を口に含むと、総司に顔を寄せる。腕を掴んで、総司の唇に自分のそれを重ねる。
「むっ!」
総司は私を押し退けようとした。私は一瞬早く舌を総司の喉元に届かせて、薬湯を喉の奥に流し込んだ。
「馬鹿じゃないの?」
総司は手の甲で口を拭った。
「肺結核がうつっても、責任持たないよ」
「……近ごろ、まともに食事もなさらないそうですね」
「相馬くんたちにきいたの?」
「二人とも、心配していました。お薬くらいは飲んでいただきませんと」
「ほんとにうるさ……」
そこで、総司は激しく咳き込んだ。私は総司の後ろに回り、苦しそうに丸まった背中をさする。
咳がおさまると、私は総司の胴に手を回してしがみついた。
「おそばにいさせてください。迷惑にならないようにしますから……どうか、兄上さまのおそばに……」
「……困った子だね」
総司は吐息を漏らした。
「好きにすればいいよ。そのかわり、労咳がうつっても、僕のせいにするんじゃないよ」
「はい……ありがとうございます」
総司の唇が私のそれに合わさった。舌が絡み合い、唾液を吸われた。
私たちはそのまま抱擁しあった。お互いの想いを確かめ合うように。
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