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狼に囚われた姫君の閨房録
第19章 伊東甲子太郎の入隊
「接待はここまでですよ」
主計が口角をやや上げた。見下すような笑みである。
「これ以上のお嬢さんへの手出しはご遠慮願います」
「どういうこった?こいつは幹部の伽をしてんだろうが。組長がどうしようが自由だよなあ?」 
三樹三郎が二人にかばわれている私に顎をしゃくると、
「勘違いしてんじゃねえよ」
利三郎がはじき返した。
「お嬢は義兄弟の契りを交わした副長たちのものなんだよ。新参者のあんたは手を出せねえの」
「何言ってる?おまえらだって……」
「俺らは世話係なんでな。副長から許しが出てんだよ。ざーんねんでした」
「テメェ!」
利三郎の挑発に、三樹三郎は腰のものに手をやった。すかさず、私は声を張り上げた。
「鈴木三樹三郎!私闘は切腹じゃ。局中法度を聞かされておらぬのか?」
三樹三郎はグッと詰まったようだ。
なんだろう?この男、何か気に入らない。
「祇園に宴席が用意してあります」
主計が本題に入った。
「ご案内しろと言われて来たんですよ、九番組組長どの」
口調は丁重だが、横柄である。
「さっさと、おいでになった方がようございます。新選組では遅刻は厳禁ですから」
私は冷ややかに言い放ち、背中を向けた。
三樹三郎は悔しそうに、主計と利三郎に連れて行かれた。
玄関には辻駕籠が待っているのだろう。この嵐に、ご苦労なことだ。
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