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狼に囚われた姫君の閨房録
第3章 京へと
一週間後、浪士組は江戸を発った。麗かな陽射しの春の朝であった。
一行は中山道から木曽路を通って、京へと向かう。梅が咲き、どこかでホトトギスの声がした。
「すみれ、足元、気を付けろよ」
中山道の道は狭く、険しい。私が木の根っこにつまずくたびに、原田左之助が腕を取ってくれた。
「ありがとうございます、兄上さま」
早くも、足は泥だらけだ。草鞋も擦り切れ、血が滲んでいた。歩き慣れていないので、足も痛い。
「輿に乗ればよかったんだよ」
私の手を引きながら、総司がぼやく。
「お役人が用意するって言ったのに。どうして、断ったの?」
「兄上さまたちとご一緒したかったからです」
上り坂になった。私は息を弾ませて歩き続ける。
「歳三兄上さまが、おっしゃってたでしょ? 俺たちから離れるなって」
「どいつもこいつも荒くれ者だからな。お前に手を出されたら、叶わねえ」
前を歩いていた土方歳三が声を荒げる。
「俺にも、お前を一晩貸せってぬかしたやつがいたぜ」
原田左之助が掌に拳を打ち付ける。驚く私に、左之助は苦笑する。
「心配すんな。その場で、瞬殺してやった」
私はほっとして、首筋の汗を手拭いで拭った。
試衛館の義兄たちに抱かれるのは構わない。だが、得体の知れない輩はごめんである。
「ところで、お父上さまは?姿が見えませんが」
その瞬間、空気が凍りついた。
歳三の眉は吊り上がり、左之助の表情が硬くなった。総司の顔色が変わり、一の双眸が光った。
(え? 私、何か悪いこと言った?)
「兄者は一足先に、宿場に向かいました」
穏やかに、三十歳の山南敬助が答えた。
フチなし眼鏡をかけた学者風の容貌。知恵があり、父の良き相談相手である。
「浪士組の宿を決める役目を仰せつかりまして」
「雑用係を押し付けられたのさ」
総司が形のいい朱唇を尖らせた。
「仮にも、道場主がそんな端役を……」
不平を言いかけて、私は口をつぐんだ。
与太者のくせに、自尊心ばかり強い連中だ。そんな奴らの誰が、雑役をやるというのか?
人の良い父のことだ。快く引き受けたのだろう。
「お一人で大丈夫でしょうか?」
「協力を申し出たのですがね、『この程度のことをやれなくては、京に行ってもなにもやれん』と言われてしまいました」
永倉新八が私の背中を叩いた。
「心配すんなって。おやっさんのことだ。うまくやるって」
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