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メサイアの灯火
第2章 伝説の大和民族
 大和民族。

 人類の中での突然変異種である農耕民族。

 その体は浅黒く、漆黒の髪と黒曜石の瞳を持つ。

 調和を重んじ、神々に愛され、その秘密の力を受け継いで世の中に安寧をもたらす血族として創造された。

 しかし今では歴史書の中に、僅かに語り継がれるのみ。

 誰も知らない、忘れ去られた民族。

 一部は流浪の民となり、一万年ぶりに世界を巡る。


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「誰か助けてっ!!」

「おい、待ってくれ!!」

「おいていかないで!!」

「誰か来てくれ、こっちに怪我人がいるんだ!!」

 アナトリア半島にある都市国家、リュディア王国の首都“サルディス”。

 今からおよそ三千年ほどの昔、ここである事件が起きた。

 静寂に包まれていたはずの夜のしじまは引き裂かれた、代わりに聞こえて来るモノは逃げ惑う人々の悲鳴や雑踏、建物の崩れ落ちる音、そしてー。

 この世のモノとは思えぬほどの凄まじい雄叫びだ、人のような、獣のようなその雄叫びは人々の心を、魂までをも蹂躙してゆく。

「王族の方々をお守りしろ!!」

「だめだ、人波が凄くて何処におられるか解らない!!」

「人々の誘導が先だろう!!」

「町を守らねば・・・!!」

「全員この場で踏み止まれ!!」

 王宮に使える兵士達は互いに声を掛け合いながら自身の持ち場を死守すべく奮闘する。

 しかし。

 “それ”は余りにも強大過ぎた、そして人々は余りにも無力だった。

 “幻獣魔王バフォメット”、それがこの地に召喚されし悪逆の王の名前だった。

 強靱な肉体と果てること無き欲望の主は、その小さな山ほどもある巨体を揺らしては町を人々を破壊し、踏み潰し、飲み込んでゆく。
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