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オレンジ色の世界で。
第1章 台風がくる。
 台風が夕方に直撃すると、今朝家を出る前に観たテレビで、天気予報のお姉さんが深刻そうな顔をして言っていた。
 実際その予報は当たっており、学校は午前中で終わってしまった。
 七月上旬、木曜日。まだ梅雨が明けて無い頃。
 帰路につき、空を見上げる。
 ところどころ濃い雲があり、ところどころ綺麗な青空があった。
 天候は目まぐるしく変化している。風は強い、まだ雨は無い。
 傘は持っていたが、この大風の中開いたら壊れてしまうだろう。
 雨に振られない内に帰ろう、と小走りで家を目指す。
 家までは歩いて十五分、小走りで十分程度。
 あと三分くらいのところで、小雨が降り出した。
 そのまま立ち止まらずに、傘も開かずに家を目指した。
 いつの間にか小走りから全力疾走となり、家に着く三十メートル程手前から勢いを落とした。

 家の門を通り、すぐに母の不在に気が付く。自転車が無い。
 母は時折、知り合いの喫茶店にバイトに行く事がある。今日もそれだろうと思った。
 そして、母がいないなら気兼ね無くオナニーが出来るな、と思った。
 ガチャガチャと鍵を開け、玄関へと入る。
 まだ十一時過ぎだった。喫茶店のバイトなら、母が帰宅するのは十五時頃だ。
 そのまま二階の自室へと向かう事にした。
 オナニーを覚えたのは中学一年生の頃。三つ上の従兄に教えて貰った。
 エロ本を借りて、女の裸を見ながらチンコを扱いてみろと言われ、それを言葉通りに実行して、精通した訳だ。
 それから、定期的に従兄はぼくにオカズを提供してくれる様になった。
 勿論、それは従兄のお古だが、比較的新しいし汚れも匂いも無かったので、ぼく的には一切支障は無かった。
 ぼくが中学二年生の頃まではエロ本ばかりを譲ってくれていたが、三年生になるとエロビデオを貸してくれる様になった。
 それをぼくは、自室の押し入れの隅の隅に隠し置いていた。
 母が週に一度は、ぼくの部屋を掃除している事を知っていた為バレない様に万全を期する必要があったのだ。
 いや、実際問題、ぼくは中学三年生で十五歳で、思春期真っ盛りな訳だからオナニーのネタが見つかったとしても、然程怒られたり、家庭内の問題として取り上げられたりはしないと思う。
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