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スカーレット オーク
第34章 34 女性客
 二人で浴場に向かった。
並んで歩くのが嬉しいと思っていると浴場の前にさっきの女性が立っていた。

「大友君、ちょっと」

 直樹を呼びつける。

「緋紗、先に入ってて」
「あ、はい」

 緋紗は黙って言うとおりにすると直樹は女性客とロビーのほうへ向かった。
後ろ姿を見送って緋紗は広い風呂場にぼんやりと入る。――どれくらい親しかった同級生だろ。

 不安の影がもやもやと緋紗を襲う。
身体をゴシゴシと洗って湯船につかったがすっきりせず、落ち着かなくなり出ることにした。
部屋に戻ろうと歩いているとロビーから話し声が聞こえてきた。
まだあの女性客と直樹は話をしているらしい。――あーあ。今日は暖炉に行けないな……。
 
 こじんまりした部屋が広く感じてしまう。
自分の知らない直樹を知ってる女性。
一人でベッドに入るとやけに広くて寒々しく時間も長く感じた。
 直樹が部屋に帰ってきたがなんだか待って起きているのも嫌だと思い、緋紗は寝たふりを決め込んだ。――さっきの人と楽しく過ごしたんだろうな。

 直樹がベッドにもぐりこんで「起きてる?」と、声をかけてきたが無視をした。

「寝ちゃったか。遅くなってごめん。おやすみ」

 直樹は昨日噛んだ緋紗の肩を後ろから抱きしめて眠り始める。――すねないで起きてたらよかった。
 緋紗は後悔しながら眠った。
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