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スカーレット オーク
第38章 38 パーティ
和夫がグラスにワインをつぎ始めるが小夜子だけペリエだ。

「じゃあ乾杯しようか。お疲れ様でした。乾杯!」
「乾杯」
「緋紗ちゃんどんどん食べて飲んで。いつもバタバタ食べてたもんね」
「はい。ありがとうございます」

 久しぶりに飲むワインはとても美味しかった。

「なんかここでお寿司って不思議ですね」
「本当はここ山奥でもないし海は近いから魚のほうが普通なんだけどな」
「そうそう実は新鮮な魚が食べられていいのよね。マグロもよく食べるわよ」
「へー。ここにいるとすごく山の奥深くにいる気がしますね」
「そうだろ。食べ物をそういうふうに演出してると特にそう思われるんだな、これが」

 色々な演出がなされていることに改めて緋紗は感心する。

 横の直樹を見るともう結構な量のワインを飲んでいて一本瓶が開いていた。

「それいいワインだから大事に飲んで」
「小夜子さんの分も飲んであげてます」

 直樹は、ニヤッとして言い、「ほら。緋紗も飲みなよ」と、グラスにワインをついだ。

小夜子は、「さて折角だから何か弾こうかな」と、立ち上がってピアノに向かった。
美しい『ラ・カンパネルラ』が流れ始める。
聴き比べたことがないので緋紗には評論家のような評価はできないが、小夜子のテクニックもさることながら演奏スタイルが情熱的で力強く美しい。
弾く人が違うと、同じ曲でも全く印象が違うものなんだろうなあと緋紗は聴き入っていた。
和夫が目を細めて小夜子を見つめる。

「ほんとはこんな山小屋で弾くようなやつじゃないんだがなあ……」
「そうですね。でもとても幸せそうですよ」

 直樹が続けて言った。――なんだか訳ありなのかなあ。
 気にはなったが二人がしんみりしているので緋紗は黙って聞いていた。
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