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スカーレット オーク
第40章 40 ネットゲーム1
 緋紗はワインを冷蔵庫から出してきて備前焼きのグラスについだ。
さっきの直樹の姿を思い出す。
直樹のことを知らなければあの獣人の狂戦士『ミスト』が本人と結びつきにくいが、今はあの姿に違和感がなかった。
自分でも『スカーレット』は分身のようで本人のような錯覚を起こす。――ネットってすごいよね。

 『ミスト』はベッドの上の直樹のようだ。
威圧的で好戦的で精力的な。
緋紗は小さな小箱からスギのエッセンシャルオイルを取り出した。
コットンに少し落としてみると青っぽい森のさっぱりとしたようなしっとりとしたような香りがする。
さっきの抱き合ったような錯覚が緋紗を熱くしていた。――会いたい……。会って抱かれたい。
 ワインをぐっと飲むと直樹の『興奮したら自分でするんだよ?』という言葉を思い出してしまった。――ああ……。

 本来はリラクゼーションに効果があるのだろうが緋紗にはまったく逆効果だった。
直樹自身がつけている香水ではないものの、木の香りは直樹を思い出させる。
さっきのキャラクター同士が抱き合ったところを目に浮かべる。
枕元に置いたコットンから薄っすらと香りが広がってくる。

緋紗はペンションでの直樹とのこと、さっきの抱き合ったことを交差させ回想した。
ワインのせいか戦闘のせいか、身体が火照ってくる。
緋紗は直樹の言葉を呪文のように繰り返しながら指を下腹部へ滑らせ、ペンションでの彼の導きを思い出しながら自分で慰める。

「うっうぅっ……」
 ――いっちゃった。

顔がのぼせて熱くなる。
なんとなく身体はすっきりした緋紗だが、直樹に会いたい気持ちはなくならなかった。――なんか違う。

 同じ行為のはずなのに一人と直樹と一緒に――と、では快感の深さや満足度が違った。――会いたい。
スギの木の香りに包まれて、直樹のことを夢に見られるように祈りながら眠った。
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