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スカーレット オーク
第1章 1 オペラ『カルメン』
 紅蓮の炎が渦巻いた窯の蓋が閉じられる。
千度を超える炎を焚き続けて十日間。
備前焼の窯焚きを終えて緋紗が見上げた秋の空は紺碧だった。
最後の追い込みで炎の色は鮮やかな紅色から黄金色に変わり、最後はまぶしい白光を放つ。
炎と対照的なコントラストの岡山の空を見ると彼女は興奮が鎮火していくのを感じ、背伸びをしながらこれからの予定を考えた。

陶芸家の一大イベントである窯焚きが終了すると一サイクルが完結しやっと休日がやってくる。
三日間だが陶芸家の弟子をしていて、週にかろうじて一日休みの緋紗にとっては久しぶりの長い休みになる。

普段の休日は部屋の掃除をして図書館に行きインターネットを少し眺めてゲームをするようなインドアな過ごし方だ。
窯元に勤める彼女の友人もなんとなく似たような過ごし方をしているらしい。

しかし今回の休みは少し特別で、緋紗が師事している陶芸家の松尾からオペラのチケットをもらっている。
チケットは一枚のみで、松尾は一人で鑑賞するほど興味はなく、彼の妻、美紀子もその日は都合が悪かった。
そこで緋紗に回ってきたのだった。
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