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スカーレット オーク
第44章 44 母子
 二月と三月は〈地拵え〉を行う。
新しく苗木を植えるための整地作業、で刈り取った雑草やら伐採した木の枝などを取り除く、これが結構な重労働だ。
伐採した木は案外太く丈夫なものがあり、常にチェーンソーを振り回していることが多々ある。
年がら年中、楽な作業一つもないのだが直樹にとって森にいることが自然なので、今のところ苦ではなかった。
ただ以前の仕事のように、帰宅後『睡眠時間を削ってゲーム』ということはできなかった。
したいとも思わなかった。
少しのインターネットや読書程度で夜は終わっても、直樹には十分満足なプライベートだった。
最近は緋紗の出現により、自然な日常が活気づいている気はしている。
そのためより満足度が上がっているのだった。

 仕事を終えて帰宅すると母の慶子が、「おかえりー」 と、声をかけてきた。

「ただいま」
「すぐ食べられるからねー」
「着替えてくるよ」

 毎日変わらないやり取りがなされる。
 部屋着に軽く着替えてダイニングテーブルに着くと、次々に料理が並べられ慶子も席に着いた。

「今が一番寒いわよね。平気なの?薄着だけど」
「山にいると暑いくらいだよ」
「身体動かしてると冬でも暑いものなのねえ」

 感心しながら慶子は言う。
母とは仲がいいのだが二人とも寡黙なたちなので、たいして会話はない。
対照的に今は亡き父と兄の颯介はやかましいくらいだ。――静かなのが一番だよ。
 賑やかさが嫌いではないが毎日になると静かな方が好ましかった。――ああ、そうだ。
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