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スカーレット オーク
第48章 48 窯焚き
「先生。ゴマが光ってきましたよ」

 緋紗が松尾に告げる。

「どれ」

 すたっと席を立って松尾が窯の中を覗きに行ったので、直樹も邪魔にならないようについて行った。

「そろそろか」

 鋭い目つきで松尾は作品を見る。
なるほど壷やら花瓶やらの表面にピカピカ光る点が見える。
あれが緋紗が言っていた灰が溶けてきた状態なのだろう。

「五十本突っ込んで蓋せい」
「はい」

 緋紗は薪を五十本用意して窯の口の付近に立てかけた。
そして鉄っぽい蓋をどかし焚口を開け、手際よく左右真ん中とまんべんなく薪を放り込む。
そして今度は煉瓦製のふたをして泥で封をし始めた。
直樹は緋紗のこの一連の動きに感心して見入っていた。
緋紗の顔は熱気で赤くなっており全身薄汚れていたが、それが精悍さを醸し出していて魅力的にうつる。
そして休む間もなく窯の横側に行き小さな焚口を開け始めた。
そうしていると男が二人やってきた。

「こんばんは」

 それぞれ松尾に挨拶をし、直樹の方にも軽く名前を告げに来た。

「鈴木です」
「谷口です」
「大友です。よろしくお願いします」
「こちらこそ」

 鈴木は直樹より少し年上だろうか貫録があった。
谷口は緋紗に近い。
二人とも人慣れしていて親しみやすそうだ。――結構気さくなんだな。

 直樹のもつ『陶芸家』のイメージも少し変わった。
松尾が、「緋紗、大友くんと焚いてやれ。鈴木と谷口でそっち頼む」と、言い直樹を緋紗に任せた。
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