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スカーレット オーク
第55章 55 緋襷(ひだすき)
「ありがとう。じゃ飲み物作るよ」
「もしかしてマティーニ作るんですか?」
「うん。オリーブなくてごめん」
「いいです。楽しみ」
「混ぜて冷やすだけだけどね。ベルモット多いほうがいい?」
「えーと。ドライ気味でお願いします」
「うん。僕も同じだよ」

 直樹は大きなガラスのコップに氷とジンとベルモットを注いでマドラーでくるくる混ぜ、二個の備前焼きのミニグラスに注いだ。

「乾杯」
「乾杯」

 緋紗はグイッと飲んだ。

「美味しい」
「そう。よかった。緋紗は強いね」
「好きなだけですけどね」
「陶芸家の人ってみんな強いのかな。この前の打ち上げ、鈴木さんなんかすごい量飲んでてびっくりしたよ」
「ああ。鈴木さんは酒豪ですよ」
「何か食べるものほしい?」

 そういえばおつまみも何も出してないことにしばらくして気づいた。

「いえ。私あんまり食べながら飲まないんです。おなか一杯になっちゃうから」
「緋紗といると楽だよ」

 直樹が素直な感想を言うと、もうマティーニを三杯目の緋紗はすっかりリラックスして、
「そうですかあ?」と機嫌よく言った。
「うん。好みが似てるから。でもしてほしいこととかあれば言ってくれるかな。僕はあんまり気が利く方じゃないからね」
「えー。もう十分です。私こそなんでもしてもらっちゃって。なんでして欲しいことがわかるのかなあっていつも思います」

 そういって緋紗は顔を赤らめた。

「何の話してるの?」
「あ。いえ。別に」

 ――可笑しな子だな。
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