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スカーレット オーク
第59章 59 誕生日
 ゆっくりと二人で甘い時間を過ごす。
何をしていても楽しかったし何もしなくても楽しかった。
ペンションへ行く時間になり緋紗は最後の日に着ようと思っていた赤いノースリーブスのワンピースに着替えて腕をみた。――Tシャツの跡がついてなくてよかった。

 このワンピースが着たくて、夏は日焼けに気を使った。
夏の陶芸の仕事は主に粘土づくりだ。
粘土は最初から滑らかではなく砂や石、ゴミが混じり、すぐ使える状態ではない。
水簸(すいひ)と言って石やら砂やら粘土やらが混じっている状態から粘土質だけを取り出していく。
水をふんだんに使い泥をかぶるようなことも多々あるので、屋外でやる夏の作業にぴったりなのだ。

毎年、緋紗はTシャツの形そのままに日焼けをしていて、いつもはそれを気にすることもなかったが、今年の夏は直樹と過ごすことになったので、初めて日焼け止めを使って仕事をしたのだった。
少し化粧もしてみる。――眼鏡どうしようかな。

 外してみたほうが良さそうなのではずしておいた。
多少、視界はぼやけるが何とかなるだろう。
 支度が出来たころ直樹がやってきて「赤がよく似合うね」と、言ってくれたので嬉しかった。
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