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スカーレット オーク
第65章 65 兄
「つまり、あれだな。ミスった賢者の贈り物ってやつか」

 上手いことを言われて直樹は苦笑した。

「もう一回プロポーズしろよ。仕事変えませんって言ってさあ」
「そういうわけにもね。もういいんだ」

 心の中では『いいわけない』という言葉が小さく胸を突いたが無視した。

「いいわけないだろ」

 颯介の声で心の中の小さな声が大きく再生されてしまう。

「お前が諦めやすいのは俺のせいでもあるんだがな。色々俺がやってきたこと見てなんとなくもういいやって気になってるのは知ってるんだ」

 確かに颯介が色々な経験をしてそれを読書するように直樹は見てきた。
颯介の結婚や育児なども遠巻きから見て頭でこんなものなんだなと、バーチャルな経験をするように感じてきていたのは確かだ。

「でもな。もうその娘とは色々一緒に経験しなくていいのか?ほんとに」

 そういわれると直樹は辛かった。
「変えないでできること何かないのか?うちだって親父の稼ぎは結構あったから何の不自由もしなかったけど、あれだけ遊ばれちゃあな。お袋も辛い思いいっぱいしただろ。そのこいい娘じゃないか。ほんとなら収入増える仕事してくれてラッキーって女は思うからな。色々ねだってくるもんだしなあ」
「そうだな。そういう女じゃないと分かっていたのにな」

 緋紗が直樹にねだったのは『ダイテホシイ』ということだけだった。
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