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スカーレット オーク
第13章 13 冬の山
「もう冬だな」

 直樹は山の冷気を感じてつぶやく。
そろそろ間伐を終え伐採の時期に差し掛かってきた。
静岡は温暖で雪が少ないため冬でも山仕事が多い。
雪山が嫌いではないが仕事となると温暖さがありがたい。

この冬に伐採するであろう巨木に触れる。
オデュッセウスのベッドの話を思い出す。――生えた木に作り付けか。
 あまり想像ができなかった。

チェーンソーを取り扱うので気を引き締めて間伐の残りに取り掛かることにする。
山の仕事は歩くこと一つ、道具の扱い一つに危険が伴い、怪我で済めばいいが命を落とすことだってある。
そういった危険性や命について毎日意識し山にいると不思議な畏怖が生まれてくるものだ。

 その日の仕事を終えると直樹は今日もよく生きたと実感する。
そしてまた次の日、山と一体化するような錯覚をおこす。
山の一部になったような気になり、それでいて山を育むものであり、また守られているような安堵感もある。
遠くから毎日同じに見える『山』でさまざまな感覚が押し寄せるのだった。
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