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独占欲に捕らわれて*Regret
第2章 紅玲の憂鬱
10数年後、髪に白メッシュを入れた青年が、唇のピアスを弄りながら難しい顔をしている。目線の先にはお手製のスクラップブックがあり、どの記事もとある大手会社が倒産の危機にある、もしくは倒産したという記事ばかりだ。
「はぁ、どうしたものかな……」
青年は大きなため息をつきながら、ソファに寝転ぶ。

「紅玲」
「うわぁっ!?」
いきなり名前を呼ばれ、青年はソファから転げ落ちる。
「いったた……。なぁに? チサちゃん」
紅玲は頭をさすりながら、自分を呼んだ愛妻である千聖を見上げる。

「なんか飲むか聞こうとしたんだけど……。そんなに驚かれるだなんて思わなかったわ」
「ごめんごめん。ちょっと考え事しててさ……」
紅玲がスクラップブックに目を落とすと、千聖は上からのぞき込む。
「お義父さまのことが心配なのね」
「お義父さま、なんて言ってくれるんだ? 優しいね」
「……疲れてるでしょ? なにかあったかいものでも飲む?」
「煎茶もらえる? 取り寄せた茶葉、いつものところにしまってあるから」
「分かった、ちょっと待ってて」
千聖が台所へ行くと、紅玲は倒産の記事を読んでため息をつく。

「はい、お待たせ」
千聖は煎餅やかりんとうなどが入った菓子受けと、ふたり分の煎茶をテーブルの上に置く。
「ありがと」
紅玲は煎茶をひとくち飲むと、小さく息をつく。
「紅玲って意外とお茶好きよねぇ。そういう人のこと、茶っくれっていうんだって」
「珈琲や紅茶もいいけど、やっぱりこれが1番落ち着くんだよねぇ。確かお茶をたくさん飲む人のことだっけ? 茶狂いが訛った言葉だったと思う」
「相変わらず博識ね。それで、お義父さまのこと気になってるの?」
本題に戻され、紅玲は小さく唸る。

「んー……まぁね……。オレがあの時ちゃんと支援してたら、こんなことになってなかっただろうし……」
紅玲は千聖に寄りかかりながら、ため息をつく。
「それで最近ため息が多いのね。気になるなら、今から助けてもいいんじゃない?」
「え?」
驚いた紅玲は、千聖の顔をまじまじと見つめる。
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