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独占欲に捕らわれて*Regret
第1章 悪夢の出世街道
大手企業であるタカノコーポレーションのオフィスでは、フチなしメガネの若い男性社員が、眉間に皺を寄せた神経質そうな顔つきでキーボードを叩いている。彼の名は鈴宮晶久。高校を卒業してすぐにこの会社に勤めている真面目な青年だ。初めのうちは高卒の彼をバカにする者もいたが、エースと呼ばれるほど実力をつけた彼の経歴をバカにする者はもういない。

「鈴宮くん、珈琲どうぞ」
「ありがとうございます」
同期である春奈が珈琲を持ってくると、晶久は一瞬だけ彼女を見上げる。
「今はそんな急ぎの仕事ないんだし、よかったら向こうで一緒に飲まない?」
「いえ、結構です」
「もう、つれないなぁ。たまにはいいじゃん。ていうかさ、同期なのに敬語なんて……」
「仕事中ですよ」
不満をダラダラ言い続ける春奈に、晶久はピシャリと言い放つ。

「そんなの分かってるよ! 根詰めすぎたらよくないと思って声掛けてるのに、その態度はないでしょ!?」
「仕事中だと分かっていないから、こうして無駄な時間を過ごしているのでしょう? それと、同期だから、歳が近いからという理由でタメ口というのはおかしいでしょう。同じ職場にいるというだけで、あくまでも他人なのですから」
「何その言い方、最低! 仕事ができるからって何言ってもいいってわけじゃないんだからね!」
怒鳴り散らした春奈は、カツカツとヒールの音を立てながら給湯室へ消える。冷たい視線が晶久に向けられるが、彼は気にすることなく仕事を続ける。

(まったく、女を雇うだけ人件費の無駄だ……)
晶久は気持ちを切り替えるために小さく息を吐いた。これで仕事に集中できるかと思いきや、違う足音が晶久に近づいてくる。
「よぉ、鈴宮。さっき春奈ちゃんがすんげー顔して怒ってたぞ」
茶化しに来たのは、課長である野崎俊介だ。女好きの野崎が苦手な晶久としては、あまり関わりたくなかった。

「そうですか」
「そうですかって、それだけかよ。何やらかしたんだ?」
ニヤつきながら聞く野崎に舌打ちしたくなるのをぐっと堪え、代わりにため息をついた。
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