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愛を嗅ぐ【完結】
第4章 シュミレーション療法
シュミレーション療法



さらにR子は、このW氏には、ストレートに自分の醜い心根を一刀両断してくれたことに感謝した。
かくて、彼女は長年の深い靄から解放され、目の前には澄んだ空間が広がった。


「R子さん、まずはそのことを自分でしっかり自覚する。それを踏まないと、その先のシュミレーション対症法に進んでも意味がないんだ。どうです?心持ち方ひとつがずれてるだけで、決してビョーキではないが、その碑ねた心根は認めますか?今までの自分は醜悪な嫉妬心を野放しにしていた最低な人間だったと…」


「認めます!ですから、私をどうか、正常な心の持ち方ができるように変えて下さい!先生、お願いします…」


R子はもう号泣して、イスに座ったまま、頭を深々と下げていた。


***



「まあ、もう泣かなくていいですから。ええと、今日はあなたが了解してくれると思って、次の段取りは取ってあるんです。今回のシュミレーションに協力してくれる私の年来の外部スタッフ2名になりますが。これから、やれますか?」


「やります!」


R子は力強く即答した。


「そうですか。…じゃあ、今回のシュミレーションです。S美さんのケースをベースに、あなたに結婚前提の恋人との仲を卑劣な中傷行為で引き裂かれた女性、U子さんを登場させます。彼女はあなたの仕業と知って、ストーカー行為防止法を視野に、あなたを告発する態度を取ったと…」


「…」


「そこであなたは、今、涙ながらに語った自分の卑しい気持ちを行動に起こしてしまったことを謝罪するんです。なんでもするから許して欲しいと、土下座すいて許しを乞う。彼女はなんでもする覚悟があるなら許しててもいいと…。そこまでが申し合わせになりますが、その後は、あなたとU子さんによる実際のやり取りになる。言わばアドリブ・リアルだ。できますか?」


「できます!私、やりますので、お願いします!」


ここでも彼女はキッパリだった。


***


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