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許嫁が多すぎる
第2章 祖父、紫水
「帰ったか、翔太」

張りのある威厳を感じる聞き覚えのない声が廊下の奥から聞こえた。
声の主である鶴のような痩躯の老人がゆっくりと翔太たちの方へと歩み寄ってくる。

「わしがお前の祖父。有馬紫水だ」

体付きは年老いていたが、周囲を圧倒するような威厳を放った立ち姿に翔太は思わずたじろぐ。
先程までの怒りの勢いさえも一瞬削がれてしまったが、すぐに正気に戻り怒りをぶつけた。

「あんたが俺のじいさんか? 勝手に許嫁つくり回りやがってっ!」

しかし若い翔太の怒声など紫水には子犬が吠えるほどの可愛さしか感じられなかった。

「気に入ったか? みな美女揃いだろう?」

「ふざけんなっ! 人をなんだと思ってるんだ!」

「お前は五人の許嫁から一人を選んで結婚するんだ」

「なんだよ、その命令は? だいたい俺にはちゃんと彼女がいるんだよっ!」

そう言って翔太はさくらの手を取って紫水の前に出す。

「ほう、そうか。じゃあ六人だ。六人の中から一人選ぶんだ」

どうということもなく紫水は言い直して孫に告げた。

「はあ!? ってかオヤジは? お前本当にオヤジの父親なのかよ?」

「そうだな。ここは狭いし、桃園やロロットも到着したみたいだから移動するか」

そう言うと紫水は靴を履き、玄関から外へ出た。
遅れて到着した桃園、ロロットも含め、紫水が用意したリムジンへと乗り込み移動することとなった。

訳がわからないもののとにかく説明してもらい、状況を整理したかった。


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